Back  舞台装置・美術について(大会等)

○扱える範囲の装置を
立派な装置を作り、時間内に建て込むことができるのが良いに決まっていますが、 高校演劇の場合、合同公演・コンクールでは舞台装置の搬出入に時間的制約があるのが普通です。 (上演の幕間は、地区大会・県大会で20分、関東大会・全国大会で30分程度が最近の流れです。)
建て込み10〜15分、撤収5〜10分程度で完了するような舞台装置をデザインしましょう。
どれくらい大きな装置が実現できるかは、部員の数と訓練度によります。
部員が多ければ大きな装置を短時間で組めるし、搬出入・建て込み・バラシの練習をたくさん積めば 積んだだけ確実に時間短縮できます。

○舞台の世界は尺貫法
舞台関係は、長さの単位に今でも尺貫法が多用されます。
最低限、下記ぐらいは覚えて下さい。

   1寸=約 3.03cm
   1尺=約 30.3cm  3尺=約 90.9cm  1間=6尺=約 1.82m   
ホームセンターで売っている材木の幅・長さがが3の倍数cm単位であることが多いことに気づいたでしょうか。 ベニヤ板が91cm×91cmとか91cm×182cmという規格なのは、ずばり3尺×3尺、3尺×6尺のcm表記ということです。
畳や、和建築の引き戸一枚の規格も、短辺3尺×長辺6尺です。この規格を「サブロク」と呼んでいます。
学校の教室も、引き戸、窓、床のタイル等、ほとんどが30cmの倍数の寸法になっています。
畳2枚分で(3尺+3尺)×6尺=「ロクロク」。 (ちなみにこれで 1.82m×1.82m=約3.3m2、いわゆる「1坪」の面積となります。)
劇場でもらえる舞台平面図に升目状の線が引かれていますが、これは「一間マス」といい、6尺間隔で引かれて いる線です。正方形ひとつの大きさが、畳2枚分となります。

○パネル
舞台上に「室内」を表現したり、屋外でも高さのある構造物を作るのに、 いわゆる「パネル」を使用することが多いと思います。 舞台の奥、さらには上手・下手に建て込んで、建造物の風情を表現します。 一度作れば、塗装や壁紙を張り替えるだけで何度も使い回せるので、伝統のある演劇部であれば、 何枚か持っている所も多いと思います。
(歌舞伎などでは、平面に絵で室内を描いた「書き割り」・風景を描いた「遠見」がよく使われますが、 高校演劇では、あまり盛んではないようです。)

輸送や搬出入の都合上、パネルは分割できるように作製します。
大きなベニヤ板がサブロク(91cm×182cm)で販売されていることもあり、サブロクかロクロクの パネルを作製し、使っている学校が多いです。 可能であれば上にあと2尺(約60cm)足して、8尺(約240cm)にできると雰囲気がだいぶ違います。
幅に関しては、例えば前橋市の群馬会館は舞台の幅が約11m(6間)あります。 群馬会館の舞台の上手から下手までパネルを建てるには、ロクロクのパネルなら6枚、 サブロクのパネルなら12枚必要です。 たくさんのパネルを建てるにはそれなりに労力(そして時間)がかかるわけですから、 袖幕をせめるなどパネルの枚数を減らす工夫は必要です。

    6尺のパネルを建てた例

    8尺のパネルを建てた例
パネルを固定するには、安全性だけを考えれば、
「各パネルを横木と釘等で連結 & 人形立て取り付け & 足を釘打ちで固定」
ぐらいやりたいものですが、搬出入の利便性、上演時間以外の道具の保管を考えると、
「各パネルはクランプで固定 & 人形立て取り付け & 重し(シズ)で固定」
程度にすることが多いです。
床への釘打ち(ガムテープ貼り)不可のホールもあるので、打ち合わせ会で確認しましょう。
「人形立て」は、パネル類を垂直に立てるのに使う道具です。
会館の付属品としてあることも多く、あれば借りることもできます。 立て木の長さは、3尺、6尺、9尺などです。
蝶番を使って折りたためるようにして、パネルに直接固定してしまうのもよいでしょう。
 
左:B型クランプでパネル間を固定  右:人形立てに重し(シズ)を載せる

 

○平台・開き足・箱足・木足
たいていの劇場には、施設付属品として「平台」というものがあります。
劇場にある平台の規格は通常、ニロク(2×6尺)、サブロク(3×6尺)、シロク(4×6尺)、 ロクロク(6×6尺)といったものです。高さ(厚さ)は通常4寸。
これに「足」を付けて高さを出し、舞台上に高さの違いを作ったりすることができます。
出すべき高さに応じて、何種類かの「足」があります。
  ・開き足 ……… 高足=2尺4寸、中足=1尺7寸の高さが出ます。
  ・箱足  ……… 箱馬とも言います。通常、6寸×1尺×1尺6or7寸の大きさ。
  ・木足  ……… 材木を切ったものです。3寸×3寸×3尺ほど。

     

高さを出した平台の前や側面は、通常「蹴込み(けこみ)」と呼ぶ板でふさぎます。 薄布を垂らす程度だと、ホリゾント・ライトなどによって透けて見えるかもしれません。
平台へ「釘打ち可」かどうかについては、劇場によって異なります。打合会などで確認して下さい。

○袖幕・中割幕
袖幕は、大道具とともに舞台空間を形成し、特にアクティング・エリアの左右を決定します。
合同公演・コンクールの場合、他校が袖幕の位置を動かす可能性があります。自校のリハーサル時に 袖幕の位置を適切に調整し、本番前には位置合わせをしておくべきです。
ホールの許可なく、大道具と袖幕とをテープ、クリップ、安全ピン、洗濯バサミ等で固定してはいけません。 (話が伝わっていなかったり固定していたことを忘れていたりして) 大道具を動かす時うっかり引っ張って破損してしまうことがあります。
大道具が倒れてしまった時、あるいは搬出入の時に、大道具(パネル等)で引っかけてしまうことも多いので要注意です。
多くの場合、劇場の袖幕はビロード地の大きな一枚布です。破損したり、 汚したりしたら損害は大変なことになります。何があっても触れないつもりでいるのが一番です。

大きくて上演中には動かすことのできない大道具を、シーン割りの都合上一時的に見えなくしたい時、 高校演劇では中割幕を使うことが多いようです。中割幕自体はホールの設備ですが、大道具の一種と考える こともできます。
中割幕は、前から2〜3枚目の袖幕と兼ねていることが多く、それが舞台中央まで伸びてきて、 アクティングエリアを前部と奥とに分割します。中割幕より奥に設置された大道具は完全に隠され、 中割幕が完全にしまった舞台は、黒いカーテン状の背景を持つ、前後に狭い空間となります。
中割幕は、「主舞台とは別空間である場所」を比較的手軽に表現できる方法です。 例えば、「基本は室内だが、一時的に屋外のシーンがある」作品で、部屋の装置はしっかり 作り込み、屋外のシーンでは中割幕を引いてその前で演技、といった使い方ができます。

    中割を引いて、ピンスポットで照らす。
    後ろの大道具が隠される。


○吊り物
舞台上方から垂らす大道具、小道具を「吊り物」と呼びます。
吊り物は、「吊り物バトン」にワイヤーを使って吊り込みます。
バトンは、幕間、上演中を問わず手動または電動で上下させることができます。
吊り物は、落ちてきたら大怪我必至。吊り物バトンに装置を吊り込む時は、様々の注意が必要です。
十分な強度を持たせて下さい。
針金(バインド線)ではなく、バトンからの長さを正しく決めて、適切な長さに処理した金属ワイヤーとカラビナを使って吊りましょう。
上演の途中で、装置が「見切れ」なくなるまで「飛ばす」場合は、吊り物の幅に注意して下さい。
吊り物バトンの前後には、照明用のバトンから照明機材(灯体)がたくさん下がっているはずです。 その隙間に収まるくらい薄い装置でないと飛ばし切ることはできません。
「雪かご」など、下から操作するような装置は、力を加えてもなるべく揺れないように工夫する必要があります。 複雑な仕掛けは仕込むのに時間がかかります。合同公演、コンクール等で搬出入の時間が制限されている場合、 吊り物処理も含めて時間内で収まるよう、綿密に計画して下さい。